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2009.10.26

世界一周旅行中止の危機!

今日はここオーランドからマイアミの空港まで車で戻って、そのあとマイアミの空港から飛行機で南米のエクアドルへ向かう。

 

飛行機が出発するのは18時50分。

 

ホテルを出たのは11時。
マイアミ空港からここオーランドまでの往路が車で4時間弱かかったので、復路も同じ4時間+1時間半の余裕を見て、飛行機が出発する2時間前には空港に到着するように逆算してホテルを早めに出発した。
行きと同じ時間がかかれば4時間後の15時にレンタカーオフィスに着くはずである。
途中で給油のときに15分ほどランチ休憩するとしても、1時間半の余裕があれば、少し渋滞しても迷っても大丈夫なはずだ。
しかも迷うことのないわかりやすい国道の一本道。
マイアミからオーランドまで来たときは、夜の国道を標識通りに進んでまったく迷わずに4時間弱で到着した。
帰りはそのわかりやすい道を引き返すだけだ。しかも行きしなにマイアミで国道に乗った場所の道路脇の風景を念のためデジカメで数枚撮影しているので、万が一迷ってもデジカメに写ったいくつかの風景を照らし合わせれば確実にレンタカーオフィス付近で国道を降りることができる。
今回の旅行でレンタカーを返しに行くのは3回目。今までの2回は散々な目にあっているので今回はわかりやすい道中にもかかわらず、1時間半の余裕を持たせて出発しているし、レンタカーオフィスから空港まではそう遠くはないし、完璧だ。わたしたちはすっかり安心していた。

 

スタンドバイミーで流れているようなアメリカの古いポップスが流れるラジオをつけながら、わたしたちは1ヶ月滞在したアメリカが今日で最後となることに若干のさびしさを感じていた。世界一周の旅での最初の訪問国だったし、ありがとうアメリカ!という郷愁の思いで、アメリカで出会った気持ちの良い人たちを思い出しては二人でなごりおしんだりしていた。

話しているうちに気持ちはまだ見ぬ次の訪問の地、南米へと向かっていった。

天空都市マチュピチュや、ナスカの地上絵、モアイ像などを実際にこの目で見れると思うと、静かなわくわくが心の底からわき上がってきた。

今度は南米の見所について興奮気味に話すわたしをモトキがこんな言葉でさえぎった。

モトキ「マイアミに向かう95号線までこんなに遠かったかな?」

わたし「……。」

そう言われてみると、ずいぶん走っているのにすぐにあるはずの95号線への入口がまだ見つからない。話してはいたけれど、2人ともかなり注意して標識には目をこらしていた。まだ一度も標識は出ていなかった。

わたし「あと少し走ったら出てくるんちゃうかな?ずっと確認してるけどまだ標識はひとつもでてないよ。」
モトキ「せやなぁ。オレもかなり注意して見てたけどまだ標識はでてないし、方向は間違いないし、もうちょっと走ってみよか。」

ということで、わたしたちはもう少し走ることにした。1時間半も余裕をみているので大丈夫。間違えていたら引き返せば大丈夫だろう。

 

でも1時間走っても標識がでてこない。

 

標識を見落としたのだろうか。不安からわたしたちはまったく口をきかなくなってきていた。ラジオから聞こえてくる妙に明るいアメリカンな音楽がさらに不安をあおる。すると、「マイアミはこっち」という標識がわたしたちの進行方向に書かれはじめた。「知らんうちにマイアミに向かってることになってるね。」とわたしが言うと「気持ち悪いなぁ。どっかでマイアミ方面のハイウェイに入るためのショートカットの道路に入るはずやのに、もしかしたらすいぶん遠回りの道で来てるんかもしれんなぁ。」とモトキがつぶやいた。でもとりあえずマイアミに向かっていることにかわりはない。「とにかく安全運転で確実に空港に向かおう。」とモトキが独り言のようにつぶやいた。

しばらく走ると「マイアミまであと○○○キロ」という看板がでてきた。けっこうな距離である。わたしは深く考えずに「マイアミまであと○○○キロやって。」ととりあえずモトキに報告した。すると「え!いまなんて言ったん?!何キロやって?」と大きな声であせりながら聞き返してきた。「え……だから、マイアミまであと○○○キロって看板に書いてたよ。」と言うと、モトキは「うそやろ?!」と頭をかきむしりはじめた。理系のモトキは瞬間的に時速何キロで走っている自分の車が何時間後にマイアミに着くか理解したのだろう。計算がニガテなわたしは、小学校で教わった「道のり・速さ・時間」の計算式を必死に思い出しながらもけっきょく割り算ができず「○○○キロって、あと何時間かかるん?」と恐る恐るモトキに聞いた。「あと、4時間半後や。」と眉間にしわを寄せるモトキ。このときすでに時計は12時半をまわっていた。17時には空港に着きたいのに、今のままではレンタカーオフィスに17時に着いてしまう。あと30分早く着かなければいけない。

「30分やったらなんとか巻き返せるやろ。昼飯は抜いて休憩もなしにして給油だけ早めに終わらせよ。少しとばし気味で行ったらいけると思うで。」とモトキは言った。

今日は南米行きの国際線に搭乗するので、どうしても時間通りに空港には着きたい。

とりあえず道はあっているし、この道をひたすら行けばマイアミに着くことはわかっている。まるでそうしたら車が早く進むのかと思うほど、わたしたちはただひたすら進行方向に目をむけていた。

 

15時半。ついに国道から見える景色が岩砂漠ではなく、町並みに変わってきた。郊外の町だろうか。閑静な住宅地がつらなる中、たまに巨大なショッピングモールが見えてくる。

 

16時。国道がマイアミの摩天楼の間を走り始めた。少し遅くなったけど、かなり巻き返したし、あとはレンタカーオフィスに行くためのハイウェイの降り口を間違えなければ大丈夫。間に合う。気が散るのでラジオを消した。ここからが肝心だ。

16時半。この30分間ずっと注意して標識を見ているけど、レンタカーオフィスという目印の看板が見えてこない。もう空港が見えてきたし、レンタカーオフィスは空港の近くだ。行きしなにデジカメで撮影した写真もこの付近だ。でもレンタカーオフィスの看板が見えてこないのに国道を降りて大丈夫だろうか。でも国道に乗り続けたらどこへ行くかわからない。わたしたちはとりあえず国道を降りることにした。

091026_01

国道を降りたのが運の尽きだった。この付近の詳細な地図を持っていないし、どこを走っているかもわからなくなってきた。とにかくこの辺にレンタカーオフィスがあったと思われるところをグルグル走ってみるけど、いけどもいけども住宅街だ。しかも、空港周辺のここはほんまにアメリカですか?と聞きたくなるぐらい治安の悪そうな住宅街だった。中米で見たような頑丈な鉄格子がすべての窓にガチガチにはめこまれている。道にはゴミが散乱し、家の塀にはスプレーで書かれた落書きがたくさんあって、窓ガラスが割れている家もある。そしてこれが一番怖いけど、人っ子ひとり見当たらない。ごくたまに見かけても目つきの悪い大柄なアフリカンのおにいちゃんたちが大きな音楽をかけて車に腰掛けているだけだった。道を聞きたいけど、聞いたら逆におにいちゃんたちに襲われるんじゃないかという、なんとも失礼な妄想まで私の頭をよぎりだした。さっきまできれいに晴れていたのに、今は雨が降り出しそうな真っ暗な雨雲が頭上にある。お天気にまで見放された気分だ。不安と焦りはピークになってきた。車を止めているのも危ない雰囲気がするので、とにかく走って走って探し続けた。わたしたちは2人とも焦りと緊張で汗だくだった。口もカラカラで、朝から何も食べていないし、トイレにも行っていないけど、そんなことはまったく気にならなかった。どうしよう!どうしよう!飛行機が行ってしまう!そのことで頭はいっぱいだった。今日の飛行機に乗り遅れたら南米までの飛行機代をもう一度購入しないといけないのかと思うと、限られた予算で旅をしているし、泣きそうになる。まるで悪夢を見ているようだ。夢なら早くさめてくれ!とさえ思ってきた。完全に現実逃避である。

そうこうしていると、とても平凡なアフリカンの家族が歩いているのを偶然発見した。とてもやさしそうな家族だ。天の助けだと思い、すかさずモトキに車を寄せてもらって、わたしが車から降りてレンタカーオフィスの場所を聞いてみた。すると、ここはほんまにアメリカですか?と再び思うぐらい、英語が通じない。みんなスペイン語を話しているようだった。時間をかけて説明するとレンタカーオフィスの場所を探しているということは理解してもらえたけれど、そんなものはこの辺りにはないよとおねえちゃんがスペイン語まじりの英語で教えてくれた。そんなハズないのにーー!!!とにかくあっちへ向かえとその家族のおっちゃんに言われたので、わらをもすがる気持ちでその方向に行ってみた。そこは行き止まりだった。

もう18時だ。1時間半も道に迷っている。今から直接空港に行っても間に合わないぐらいの時間だ。前向きに考えようと思っても、窮地に立たされるとこんなに混乱するのかと思うほど、何も思いつかない。レンタカーのレンタル時間も17時までにしてあったので、延滞料金のほうも気になりだした。とにかくもう一度国道に乗って、それからレンタカーオフィスの看板を探しなおすことにした。国道の入口を探すも、やはりわからず迷いまくった。ガソリンスタンドやコンビニでいろんな人に聞いてなんとかハイウェイに乗れた。さっきは空港の手前で降りたので、空港をすぎてしばらくするまで国道を降りずにいると、やっと「レンタカーオフィスはこっち」という看板がでてきた。よかったー!そこの国道の出口から出たらもうすぐにレンタカーオフィスだった。今までの努力はなんだったのか。わたしたちは冷や汗をぬぐいながらレンタカーオフィスにかけこみ「遅くなってすみません!」とキーを出すと「OK!ありがとう!」と延滞料金はかからないようだった。よかったぁ。このとき18時45分。あと10分後にわたしたちの飛行機は飛んでしまう。ここのレンタカーオフィスから空港まではレンタカーオフィス専用のシャトルバスに乗っていくので、わたしたちはなすすべもなくシャトルバスを待った。もう今さら空港に行っても間に合わないことは確実だ。搭乗ゲートもすいぶん前に閉まっているだろう。シャトルバスに乗って空港に着いたのは19時5分。わたしたちの飛行機は電光掲示板で確認すると、すでにエクアドルに向けて出発していた。

 

間に合わなかった…。

 

せっかく世界一周航空券を購入したのに、アメリカから南米に行く航空券がムダになった…。今日のエクアドルのホテルも予約していたし、明後日にはエクアドルでのわたしたちのメインイベント、ガラパゴス諸島のツアーがはじまる。とにかく明日中にはエクアドルに着かなければいけない。わたしはモトキにエクアドル行きのチケットを買いに行こうと声をかけた。するとモトキが「とりあえず、オレらが乗ろうとしてたアメリカン航空のカウンターに並ぼうや。」と言い出した。わたしは「なんで?もう乗り遅れたのに、そんなことしても意味ないよ。アメリカン航空のエクアドル行きは一日一便しかないねんで。しかも自己責任の国アメリカで自分の都合で乗り遅れましたって言っても、それは残念だったねって言われるだけやよ。」とネガティブ満載の言葉を返した。でもモトキは「まぁそう言われたらそう言われたときや。なんとかしてくれるかもしれんしな。とりあえず、オレは一人でも並ぶで。」と長蛇の列ができているアメリカン航空のカウンターに並びだした。わたしは今になってお腹がかなりへっていることとのどがかなり渇いていることに気づきながら、しょんぼりと肩を落としてモトキと一緒に並んだ。荷物の重さがいつも以上に重たく感じられた。

 

20分後、カウンターでわたしたちの番がやってきた。わたしはこの20分間、こんなことしても意味ないというようなことをモトキに愚痴っていたが、モトキは相変わらず根拠のない「大丈夫や。」を繰り返していた。とりあえずわたしはカウンターのおねえさんにダメもとで、さっきの飛行機に乗り遅れたことと、その事情を説明した。すると「少しお待ちください。」と端末をたたきだした。わたしたちは審判の時を生唾を飲み込みながら静かに待った。おねえさんは機械的な口調で「明日の同じ便にはお乗りになれますか?」と聞いてきた。わたしたちが「はい!」と小学生のように声をそろえて返事すると「じゃあ明日、これを持って来てください。今度は遅れないようにね。」とおねえさんが微笑みながらチケットを渡してくれた。「チケットの変更料はいくらですか?」とわたしが聞くと「もちろん、無料です。」とおねえさんは言った。やったぁぁ~~!!!!!ありがとう!と何度も言い、カウンターを離れたわたしはうれしくて泣きそうになった。明日エクアドルへ行けるし、しかもチケットも無料で変更してもらえたのだ!本当によかった。モトキを見ると「最後まであきらめんオレの勝利やな」と誇らしげに笑っていた。ほんと、最後まであきらめないことって大切だなとこのときわたしは体感した。そしてモトキに感謝した。モトキがいなかったらわたしは何もせずに新しいチケットを買っていただろう。これからは何があっても、ダメもとでも、決して最後まであきらめないでおこうと硬く決意した。

 

この日は空港のホテル紹介のシステムを使って空港近くのホテルに宿泊した。エクアドルのホテルに今日のキャンセルを伝える電話をして(キャンセル料は無料にしてくれた)、空港で買ったサンドイッチをホテルの部屋で食べながら、今日のことは一生忘れないだろうなとふと思った。床に就いたのは深夜だった。わたしは助手席でワーワーわめきちらしていただけだったけど、よく考えたらモトキはずっとその間冷静に運転していたのだからどんなに疲れていただろうと思うと、モトキの背中を見ながらありがたい気持ちでいっぱいになった。

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